Fahrenheit -華氏-


「恨みだなんて、そんな大げさな…」


と佐々木がちょっと苦笑したけど、俺は何も言えなかった。


ただ表情を険しくさせて画面を睨む。


俺の表情に威圧されたのか、佐々木は口を噤んだ。


「…あ。でもその翌年、会社は他社と合併して、そこからまた上昇してきてるぜ」


裕二がグラフの先を指で指し示す。


「……ホントだ」


「えーっと……合併先は…」


裕二が答える前に俺は先回りして口を開いた。






「“あの”ヴァレンタイン財閥だ」





「ヴァレンタインって、柏木さんがこの前入札で勝ち取ったライバル会社ですか?」


佐々木がおずおずと口を開く。


「―――ああ、間違いない」


業績、株価が下がった理由がやっと分かった。


誰の恨みを買ったのかやっと理解できた。


柏木さんがあそこまでヴァレンタイン財団のことを敵視してるのかも……分かった。




でも一つ分からないことがある。



何故ヴァレンタイン財閥はファーレンハイトの妨害をした?


その後何故吸収とは言え、合併の話を持ちかけた?


何故―――……?





単なる会社や財団との確執じゃない。


それは柏木さんが笑わなくなったのと、何か関係しているのか……



これにはまだまだ裏がありそうだ。




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