Fahrenheit -華氏-

■Greeting(挨拶)


――――


「裕二~!」


週明け、早速俺は裕二の階に行って、奴の部署を訪れた。


「何だよ、やけにご機嫌だな」


俺のにこにこした態度を気味悪がって裕二が表情を歪めた。


「ふっふっふ。賭けは俺の勝ちだな」


「何!お前…!!」


裕二がガタンと椅子を鳴らして勢い良く立ち上がった。


システムの連中がそんな俺たち二人を訝しげに見上げてくる。


「ここじゃまずい。喫煙ルームにでも行こうぜ」


裕二は苦い表情をして、シャツの胸ポケットからタバコの箱を取り出す仕草をした。







「なん…お前、とうとうヤッたのか…」


裕二の問いに俺はえへらえへら笑った。


タバコを吸いながらだったので、煙が変な風に途切れた。


「ちっ。俺だって柏木さんと同じ部署ならな~」


と言いながらも銜えタバコをしながら、尻ポケットからブランド物の札入れを取り出す。


そしてその中から諭吉様を二枚取り出し、俺の目の前にかざした。


「ほらよ」


「例え同じ部署だってお前にゃ無理だって」


すっかり勝った気分でいる俺はにやりと笑って、諭吉様に手を伸ばした。


「で……どうだった?」


俺が札を取ろうとすると、裕二は真剣な表情で俺を覗き込んだ。



裕二……怖えぇよ。







< 165 / 697 >

この作品をシェア

pagetop