Fahrenheit -華氏-

な!何言い出すの!!このヒト~~~


柏木さんが感情の線が一本抜けてるってわかってても、幾らなんでもここでこの発言はないでしょ!!


ってかKY??


もっと空気読もうよ~!!


「か、柏木さん!ちょっと外出よう。ね?」


俺は柏木さんの腕を取ると、腰をあげた。


だけど柏木さんは俺の手を乱暴に振り払った。



柏木さんは俺を見ていなかった。


花嫁のマリちゃんを見ていた。


だけどその視線は険しく―――いつだったか………そう、あれはヴァレンタイン財団のことを口にしたときのような冷ややかで怒りを含んだ表情だった。


柏木さん……何を怒ってるの―――?


「あなたは!もう一児の母親なんでしょ!?しっかりしなさいよ!!」


柏木さんが声を荒げてヒートアップしたのか、椅子をがたつかせ立ち上がった。


彼女の言葉にマリちゃんが顔を上げる。


涙で濡れた顔は化粧が落ちてぐしゃぐしゃだった。



「いい!!あなたはすでに一回桐島さんのことを裏切ってるのよ」


「柏木さん……俺は裏切られては……」桐島がちょっと怒ったように眉を吊り上げた。


まぁ愛は盲目と言うからなぁ。桐島の反応は当然なわけで……


でも柏木さんは桐島をビシリと指さすと、


「Shut up!(お黙り!)」と一喝。


桐島が驚いて、たじろいだ。


って言うかみんなびっくりだ。


初めて聞いたぜ、本場もんの「シャラップ!」


って感心してる場合じゃない。







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