Fahrenheit -華氏-


裕二と賭けをした。


どっちが柏木さんを早く堕とせるのか。


俺も裕二も金額が問題だったわけじゃない。


この、百戦錬磨のこの俺が!まだ何も言ってもいないし、手も出してないってのに、


あっさりバッサリやられたことが!!悔しくてしょうがない。


見てろよ!柏木 瑠華!!絶対俺にメロメロにさせてやる!


っても、どっから攻めていきゃいいんだか。


まぁ、俺は裕二と違って柏木さんと同じ部署だからこっちに分があるけどね。


「おはようございます」


俺が出勤すると、デスクにはすでに柏木さんの姿があった。


「おはよう。早いね」


「部長も早いですね」


「俺はいつもこの時間」


朝の7時半。俺はいつもこの時間帯に出勤してくる。


始業時間は9時だから1時間半も早くに出勤してくるってわけだ。


「ここは朝礼がないから、もう少し遅くてもいいよ」


俺はにこやかに柏木さんを見た。


「そのようですね。重要事項も全部メールで送られてくるみたいだし」


そう言ってパソコンのディスプレイに目を向ける。


俺はそんな柏木さんの横顔を見た。


昨日と同じようなメイクで、服装はカシュクールの白シャツに濃いラベンダー色のカーディガンを肩にさりげなく掛けて、胸元にはカーディガンと同系色のネックレス。


ボトムはピンストライプの黒パンツだ。


くっそぅ。


今日も俺好みの格好をしてきやがって。


てか朝早いのに、何この完璧な仕様は。




< 34 / 697 >

この作品をシェア

pagetop