Fahrenheit -華氏-

「「「かんぱーい」」」


俺のビールが運ばれてくると、五人が再びグラスを合わせる。


カチャンっと小気味よい音が響いて、俺はビールをぐいと飲んだ。


「はぁ。仕事の後のビールは旨いね」


ジョッキを置いて、俺は柏木さんに笑いかけた。


柏木さんは相変わらずの無表情でビールを飲んでる。


表情はちっとも変わらないのに、一気に半分ぐらい空けた。


ってか……随分良い飲みっぷりで…


白い喉元が上下するのが妙に色っぽい。


初めて気づいた。


いい女が豪快にビールを飲む姿は……




すごく色っぽくて……ドキドキする。



しかも柏木さんは今日も相変わらず俺好みの服装で。


メタルスタッズとシルバーラメのロゴが入ったロンTとタイトなデニム、黒のジャケットに赤地に黒の模様が入ったアニマル柄のスカーフをかけている。


いつもは降ろしている髪を今日はアップにしてポニーテールを作っている髪形も可愛い。


俺好みということは、つまり裕二の好みでもあって(こいつとは好きな女のタイプがかぶるんだよなぁ)益々気が抜けない。


その証に裕二は柏木さんにしきりに何か話しかけている。


これは



何か手を打たねば……



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