Fahrenheit -華氏-

■Bedroom(寝室)



エアコンつけるか…なんて思いながら、ローテーブルの上に乗せられたエアコンのリモコンを手に取る。


瑠華は俺の後を大人しくトコトコと歩いてきた。


「設定温度28℃ぐらいでいい?瑠華は寒がりだから」


「ファーレンハイトだと、82°Fですね」


「え……うん…」


前にも……あった。


あのときは俺の体温を華氏に換算してたっけ。


「ところで、設定温度は大丈夫?」


「ええ。いいですよ?」


瑠華はちょっと首を傾けると、口元にかすかな笑みを湛えた。


淡いピンク色をしたグロスがのった旨そうな唇。


挑発されてるようで、ドキリとした。


え……?


だって、どの流れで甘い雰囲気になるの??


甘い……と言うよりも、何か色っぽい。


「あの…瑠華サン……つかぬ事をお伺いしますが、もしかして僕を誘っているのですか?」


妙な緊張を押し隠すため、俺はわざとバカ丁寧に言ってチャラけた。


違っても、場の空気が壊れないため。


「さぁ、どうでしょうね?」


瑠華はちょっと意味深に微笑むと、俺の腰に腕を回してきた。



あぁ!!もうっ!!!この人は!!






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