Fahrenheit -華氏-


「ちょっと!緑川さん!!」


俺は緑川を退けようと必死に彼女の肩を掴んだ。


本気を出せば緑川なんて跳ね飛ばすことは簡単だが、いかんせんこいつも一応女だ。


乱暴するわけにはいかない。


こんな時まで変な常識にこだわる俺、どうよ……


そんな必死な俺の形相を見て、緑川はおもむろに起き上がった。


但し、俺を跨いだまま座り込んでいるのは変わりないが。


それでも胸の辺りの圧迫感が消え、ひと時ほっとした。


だがしかし!!


緑川は何を思ったのか、茶色いニットのカーディガンを脱ぎだした。


「ちょっと!何してるの!?」


俺の動揺をよそに、緑川は中に着ていたノースリーブの白いブラウスのボタンを外しだした。


!!


するりとブラウスを腕から抜き取ると、白いレースをあしらったブラ一枚の姿になる。


白い胸はやはり瑠華より立派で、くっきりと谷間が刻まれてる。


「据え膳食わぬは男の恥ですよ」


そう言って緑川が俺の上へまた覆いかぶさってくる。


「じ、冗談じゃねぇ!!食うかっ!ボケ!!」


俺は自分を取り繕うのも忘れて素の自分で怒鳴った。




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