Fahrenheit -華氏-

*Side Ruka*



.。・*・。..*・ Side Ruka ・*..。・*・。.





啓をバスルームに追い立てて、あたしはため息を吐いた。


こんな態度取るつもりなかったのに…


可愛げのない自分にうんざりする。


だからあたしはうまく行かないのだ。


もっとかけるべき言葉はあった。もっと聞きたいことを素直に聞けば良かった。


頑ななあたしの態度に、啓が怒り出さなかったことが救いだ。


彼がシャワーを浴びている間に、何とか気持ちを落ち着かせなければ……




―――2時間前―――


カラオケがおひらきになると、あたしは啓の言う通り佐々木さんにタクシーで送ってもらった。


後部座席で佐々木さんと二人きり。


仕事場では二人きりなんてしょっちゅうなのに、そう言えばこういうプライベート…それも密室で二人なのは始めてだ。


佐々木さんは啓と違って、真面目だし言っちゃ悪いが気弱なタイプでそれが逆に安心。


万が一の間違いも起きなさそう。


広尾から六本木まですぐ近くだ。


啓もそこまで心配しなくても……と思うけど、反面あたしのことを心配してくれるのは素直に嬉しい。


窓の外の流れるテールランプの波をぼんやりと見つめていると、隣で佐々木さんがおずおずと口を開いた。


「あの……柏木さんと…部長と付き合ってるんですか?」


あたしはゆっくり振り向いた。








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