Fahrenheit -華氏-
初出勤の日に、朝のワイドーショーの合間に流れた占いコーナーを何となく見る。
『今日の運勢第一位は山羊座の人。思わぬハプニングが素敵な出会いに繋がるかも♪』
明るい女の人のナレーションを聞いて、あたしはプツリとテレビの電源を切った。
出会いなんて求めてないし。
出会ったところで、どうこうなりたいと思わないし。
――――
「だ、大丈夫ですか?」
ハプニング―――と言うのだろうか…
出会いがしらにぶつかった人は、ハンサムな男の人だった。
あたしを覗き込む、そのきれいな瞳に吸い込まれそうになる。
左右で色が違う―――とても珍しい眼。
すらりと背が高い。マックスと同じぐらいありそうだ。
でもマックスより少し華奢な感じがする。
「急いでいたもので。お怪我は?」
「これ、あなたの?」
地面に転がった携帯を手渡すと、彼はにっこり微笑んで「ええ、どうも」と受け取った。
びっくりするほど綺麗な笑顔。
そこには何の策略も、下心もなさそうに見えた…(今思えば、あたしの目は節穴かって突っ込みたくなる)
今気づいた。
あの笑顔は幼い頃の彼の笑顔と
何も変わっていなかったことに―――