月影
「また会えるといいわね」

くるりと小太郎の方を向く。
複雑そうな表情を浮かべる小太郎に、玲子はにっこりと微笑んだ。

「この世界で、私以外の新しい繋がりを、あなたには作ってもらいたい」

玲子の言葉に、小太郎は小さく頭をふった。

「俺の主は玲子だ。それだけで十分」

「いいえ」

小太郎の言葉をさえぎる。

「この世界は、あなたの生きていた、あの、戦国の世とは違うの」

その言葉に、小太郎は辛そうな表情を浮かべる。

「主とかそんなことはもう気にせず、あなた自身の幸せを、求めてもいいの」

玲子の言葉に、小太郎は何も言わず、すっと立ち上がった。

「私は、あなたに会えて、一緒に暮らすことが出来て、今、とても幸せよ?そりゃ…幸姫とはもう、二度と一緒に過ごすことは出来ないけれど、代わりに小太郎という新しい家族ができた」

その言葉に、小太郎は俯いた。

「だから、あなたにも幸せになってほしい。思う様に生きてほしい」

玲子は立ち上がると、優しく小太郎を抱きしめた。

「あなたは私の大切な家族なんだもの」

小太郎は何も言わず、ただ、玲子にもたれかかった。
玲子はまるで小さい子をあやすように、小太郎の背中をさすった。

< 36 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop