大きな栗の木ノ下で♪
ところでさ
なんでこの丘に来たかったんだよ?


僕は疑問に思って前を歩く背中に問い掛ける


すると足を止め、振り返りこう答えた↓

「お前さ、いっつも小さい頃俺を置いて行っちゃったじゃん?」
だからっ
そういった彼の顔は悪戯っ子のような淋しいような目をして笑っていた


小さい頃の記憶、か…


思えば僕は鮮明に覚えている記憶が指折りくらいしかない、というかそれが普通だろうと思えてきさえいる


今彼が言った記憶も僕のなかでは思い出深いとは言えず、曖昧に返事しただけだ

この山には何度も出入りした筈なのに、なんでか詳しい記憶は薄い煙りに包まれてしまっていた


全てはあの子に出会ってからだ。
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