ひねくれ双子の険しい恋路
あたしのすぐ斜め後ろには教室のドアがある。
そこは開いてて、遠ざかる足音が聞こえた。
……なんで。
いつもこういうタイミングに…。
「ねえ砂希」
『え?』
麻弥は「梨沙」とは言わずに、あたしのことを見て確かに「砂希」と呼んだ。
確かにさっきまで麻弥と話していた梨沙は隣に居るから、その隣に座るのは自動的に「砂希」になる。
けど、あたしに話しかける麻弥が意外だった。
「ちょっと聞いてもいい……?」
『……どうぞ』
真剣な麻弥の目が不思議。
「砂希と麻生くんってどういう関係なの?」
……。
あの流れを見られたら、聞かれるのも予想できた。
てっきり梨沙と喋ってるのかと思えばこっちまで見てたんだ。
『どっちの麻生?』
このクラスには、一夜と静夜の2人の「麻生」がいる。
だからとっさにごまかした。
「ちょっとしらばくれないでよ、麻生一夜君のほうに決まってんじゃん」
なんだか麻弥は楽しそうだった。
別にあたしのことなんか聞いたってそんな面白くないって。
そう言おうとしてやめた。