【短編】10年越しのバレンタイン
「それ、何年前の話ですか?」
気がつけば、震えそうな声で私はそう聞いていた。
「んー?えっと、18の時だったから……10年前だ。あの子は小学生みたいだったけど」
「―――っ!」
息をのむ。
こんな偶然ってある?
ううん、きっと無い。
男性の話している女の子は、多分私の事だ。
そうすると、この人は―――あの『お兄さん』って事になるよね?
私は、隣に座る男性の顔を改めてしっかり見た。
「えっ?どうかした?」
少しの休憩が彼を元気にしたのか、男性の顔は初めに見た時と違って見えた。
お兄さんだ。
今度は確信が持てた。
どうして気付かなかったんだろう。
こんなにも、10年も会いたかった人なのに。
そう思うと、急に心臓がドキドキと早くなりだした。