悪魔的ドクター

野菜炒めを口に運ぶのを
食い入る様に見つめられ
…食べづらい。



「うん、おいしい」


「本当ですか…?」


「あぁ」



咲桜ちゃんは
ホッとしたみたいで
安堵の笑みを浮かべた。




人の手料理を食べるのは
3・4年ぶり…


不規則な生活ばかりで
まともな飯は久しぶり。


1人だと
簡単に済ませる事が多いから。


こうして誰かと食べるのも
いいもんだな…



「あ、飲み物持ってきますねッ」



咲桜ちゃんは席を立ち
慌ただしくキッチンへと消えていった。



「何もそんな急がなくても…」



まったく…。


可愛いな…彼女は。




フッと笑顔が零れ
また箸がオカズに伸びる。



だが、止まった。







俺は今
とんでもなく
和んでるんではないか?



彼女は患者であって
ここには入院で来ていて…


で?なんだ?
この新婚夫婦みたいな空気は。




『可愛いな、彼女は』
って、何を普通にサラッと考えてんだ。


セクハラ発言も
ここまで来ると変態だぞ。




最近の俺は
頭がオカシイのか?


イカれてるのか?



「たぶん疲れているんだな…」



『疚しい気持ちはないんだ』と、何度も念を押すように自分に言い聞かせながら、黙々と食事を続けた。



――……速水side END *。+†*



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