悪魔的ドクター
「君の事を知りたくて、この部屋の個室で、君の名前と携帯番号を見付けたんだ」
言いながら
男は少しずつ近付いてきた。
逃げるにも後ろは棚。
これ以上は下がれない。
「ずっと見てたんだよ?声が聞きたくて何度も電話したのに…どうして出てくれないの?」
ジリジリと
男はその距離を縮めていく。
やめて…来ないでッ
「この部屋にも来なくなって、会えなくて寂しかった…。だから君に会いたくて後を追った」
「…イヤ…」
「君の顔を見たかった…君に触れたかった」
逃げなきゃッ
あたしは思いきって走り抜けようと、横に一歩、脚を踏み出した。
…だけど
男に気付かれ、腕を捕まれた。
「ねぇ、どこに行くの?」
「…ッ」
思った以上の力に
腕は痛みだす。
「は…なして…」
絞り出す様に声を発したが
男には通用しない。
「その顔…可愛いよ」
そう言った後すぐだった。
男は腕をグイッと引っ張り
あたしの体を
床に叩きつけた。