悪魔的ドクター
ジリジリと近付かれ
あたしは
自然に後退りしてしまう。

壁に追い込まれ
気付くともうこれ以上は下がれなくなっていた。


それでも先生は近付き
あたしが寄り掛かっている壁に手を当て、耳元で囁いた。



「仕事を増やすな」



そう言って
先生は体を離した。



あたしは彼の言葉に
耳を疑った。


医者として
あるまじき言葉。

それが先生の言うセリフなのか。

医者ってそんなに偉い人なのか。


そんな医者なら嫌い。
こんな速水翔灯は大っ嫌い。



「あたしは帰らないからッ!」


「おいッ」



先生が止めるのを無視し
あたしは足早に席に戻った。





明里に無理矢理連れて来られた合コンだったから、まったく乗り気じゃなかった。


だから素直に言う事聞いて
この時点で帰ればいいのに…

どうしてあたしは
先生に反抗してるんだろう



何を悔しがって
なんで怒ってるんだろう



速水先生は
何も間違っていないのに…





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