悪魔的ドクター

左側から呼ばれる声がし振り向くと、男性が1人立っていた。



「…速水先生?」



少し距離があり暗闇で見づらい。だが、なんとなくそう思う。



その距離が少しずつ近付き
徐々に姿がはっきり見えてきた。


やはり速水先生のよう。
眼鏡はなく、私服姿はオフモードだとわかる。


「こんな時間に何してんだ?女の子が夜道で1人は危ないぞ」


「あ、えっと…」



まさかここで会うとは予定外。
先生の家の前だし当たり前なんだけど、タイミングが良すぎて驚いた。



「ん?」


「それは…」



先生は首を傾げながら
あたしの返事を待っているが
いざ本人を目の前にすると
さすがに緊張して言葉が出てこない。



まさか
『一緒に住みに来ました』とか
『居候します』って言う訳には
いかないよな…。



「えっと…ちょっと散歩と…コンビニ巡りを少々…」


「は?」



あたしは何を言ってんだ。
アホか?バカか?

ちょっとって距離でもなければ
散歩するって時間でもない。
だいたいコンビニ巡りって…。



下手すぎる言い訳に
先生の呆れた声が余計にグサッとくる。






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