オアシス
Vol.1〈憧憬〉


〈Vol.1〈憧憬〉〉


夏本番を知らせる、梅雨明け宣言された東京――。

照りつける太陽の日差し。熱せられたアスファルト。無表情で行き交う人々。スクランブル交差点ーー。

限られた範囲の中に、限度額を超えた人の群れ。途切れることのない群れ、群れ、群れ……。


大都会、東京――。


上京して六年。東京の街、東京の季節、東京の空気にもすっかり慣れた。車からはきでる排気ガス、満員電車、星の見えない夜空……。人が凄く多いのに人ゴミの中にいると孤独になる。寂しくなってしまう。


……なぜ?


私、朝比奈瞳は18歳の時に札幌から東京に出てきた。

上京した目的は……。

特にないんだ。

高校生の頃、テレビの中の原宿や渋谷に興味を持ち、卒業したら絶対に上京すると一人で決めた。友達には言ったけど、家族には言わなかった。どうせ言っても反対されるのはわかっていたから。だから言わなかった。
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