オアシス


私の勤務は夕方五時までで、残りあと30分をきった頃――



ブルブルブル……



携帯のバイブが鳴った。慌てて開くと、

〈丸山聡〉

と、表示されている。

……!!!

私は、驚きのあまりすぐに電話に出ることができなかった。

バイブは鳴り続ける。

“……どうしよう”

やがてバイブは鳴りやんだ。なぜかホッとして目を閉じる。携帯を持ったまま。



ブルブルブル……



……!!!



落ち着いているところに手の中の携帯のバイブが鳴り、驚いて目を見開いた。するとまたしても電話だ。相手は同じく聡だった。

「……もしもし」

「丸山です。聡です」

「あ……、はい」

「急なんだけどこれからライブなんだ。良かったら、観に来ない?」

「え? 今日、これから……ですか?」

「うん。前もって連絡できなくて、ごめん。バイトとか、リハーサルとか色々忙しくて」

「そうだったんですか……」

「もし来れるようなら、スタッフに話通しておくから」
< 71 / 123 >

この作品をシェア

pagetop