野球部のあなたとあたし
激しく降り続く、嫌な雨……。


傘があたしの頭の上で、雨を弾く。


「おはよう沙弥」


昇降口の前で、親友の沙弥と会った。


「あ、美那!今日は早いね」

「早起きしたから」

「いやーね、雨」


沙弥も恨めしそうに灰色に染まっている空を見上げる。


「おはようございまーす!」

「しゃっすっ!」

あたしらの気持ちとは裏腹に、雨を吹き飛ばすような元気な声。


靴箱の前で、野球部の人達は教室へと向かう人達に挨拶をしている。


雨の日の、野球部の日課。


「頑張るね~、野球部」


沙弥が後ろを振り向いて、何気なく言う。



頑張ってる……か…。



うちの野球部は、晴れようが雨が降ろうが雪が降ろうが、練習練習練習の毎日。


休みなんてほとんどない。


だから、大会ではいいところまでいくし、練習してるところはかっこいいんだけど……。


「行こうか」


意を決して、靴を履き替えて挨拶をしている野球部の前を通る。


「おはようございます!」


一際通る声のあいさつを聞いた瞬間、あたしは早歩きでそこから立ち去った。



もう、忘れたと思ったのに…………。

< 2 / 59 >

この作品をシェア

pagetop