わたしとあなたのありのまま


 土曜日のAM10時。

 夜勤明けで寝ている母を起こさないよう、少し遅い朝食を静かに一人で摂る。
 昨日の夕飯の残りの味噌汁を一口すすると、不意に携帯が鳴りだした。

 慌ててリビングへと走り、テーブルの上のそれを手に取って、耳に当てた。


「もしも……」

「お前、今日暇?」

 『もしもし』すら最後まで言わせず、いきなり要件を一方的に押しつけるやつなど、アイツしかいない。


「『お前』って誰ですかぁ?」

 ムカついたので、憎まれ口を叩いてやる。

「ああ、今日はもう、そういう屁理屈いーわ、俺忙しいし。
 で、暇?」

 なめんな、田所。

「お客様のお掛けになった電話は、現在電波の……」

「あ~~~~っ! 
 ほんっとめんどくせぇ。

 ほのかちゃんです、ほのかちゃん。
 今日はいかがお過ごしでしょうか?」

「よろしい。答えてやろう」

 言って少し間を置き、

「暇じゃない」

 と答えた。
 本当はバイトもないし、暇なのだけれど。


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