小指心
信じられない。
「ちょ・・・一馬イキナリどうした―――」
「イキナリなんかじゃないよ、普通」
「いや、普通って・・・」
一馬はなんだか、良い笑顔だ。
なんか、心に余裕がある笑顔。
どうしてだろう、いつものカッコイイ一馬。
ズキン
見ているだけで心が痛むの。
「やり直してくれ」
顔真っ赤にして私に言う。
駄目、さっきまでの平常心が揺れてくる。
「一馬・・・私・・・」
どうしよう、本当に、どうしよう。
なにも、声が出ない。
嬉しいから出ないんじゃない、答えが出せない。
本当に出せないんだ。
「梓の気持ちを聞かせて・・・?」
そんな顔で囁かないでよ、反則だよ。
私は、本当に迷っていて。
途中で涙が出そうになったほど、それはそれは混乱していた。
「一馬・・・」
本当の事を言うしか、私の中には選択肢はないの?
「私は・・・」
駄目、一馬そんな目で私を見ないで。
心が、痛くて苦しくて。
思っていたより私にはきつすぎていてさぁ・・・
死にそうなんだよ。
「・・・っ、・・・駄目だよっ・・・」
ああ、言ってしまった。
「ぇ・・・どういう事」
一馬が急に泣きそうな顔になった。
あの笑顔を見せてよ。