小指心
「南朋・・・なんでそこまで」

「だって、私の彼氏だもん。浮気は許さないよ?」

「・・・」

止めて、止めてよ。
さっきまでの幸せを返してよ。



『可愛いよ姉ちゃんっ!似合ってるっ!』

『なにもそこまで言わなくても』

『いや、本当に可愛いっ!』



飛鳥があそこまで私のために・・・
部屋も片付けて、髪も可愛くしてくれて。

どれもこれも、全て一馬と私のためなのに。


・・・なのに。


「梓、今日はめっちゃオシャレしてるね。髪もいつもとは違って凄く可愛いし」

「・・・」

こんな、南朋に褒められても嬉しくない。

嬉しくない、嬉しくない。

嫌な感情ばかりがこみ上げて来た。
しかも、隣に一馬がいるってことに嫉妬を覚える。

「げー!梓の家ってこんなに広いの?ちょっといれてよ」

「っ!」

南朋は勝手に玄関にあがってスリッパを履いてきた。
しかも大声でこう叫ぶ。


「おじゃましまーす!」


上がらないで、私の家に入らないでよ。
一馬、会いたかったのに。

―――――こんな形になるなんて。

「っ、入らないでっ!!」

「・・・っ」

駄目、南朋は入らせない。

絶対に。
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