孤高の天使



気のせいかと思ったが…―――――



“イヴ”


今度ははっきりと聞こえた。女の声にしては低いその声は男のものだった。

ラバルには聞こえていないはずだが、グルル…と低く唸って辺りを警戒を示している。




「誰!?誰なの?」




“この時を待っていた”



空に向かって叫んだ声に反応するように返ってきた返事。

嬉々としているようにも聞こえたその声が耳に入った刹那、足元から円を描くようにして広がる影。




「なに…?」

突如現れた黒より深い闇に足がすくむ。底の見えない闇に漠然とした不安に駆られ、頭の中で警鐘が鳴った。




――――逃げろ、と。

しかし、いくら足掻こうとも足が地面に張り付いたように動けなかった。




「ラバルッ!」

焦りで上擦った声を上げるイヴに反応したラバルは水しぶきを上げながらものすごいスピードで駆け寄る。

しかし、影が完全な円を描き切ったその時、イヴの身体を一瞬の浮遊感が襲い…。




「きゃぁぁーーーッ!」



イヴの体は影に吸い込まれるように堕ちた。






深い深い闇へと……――――


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