孤高の天使
圧迫感も痛みもないその力に身を任せた。
ゆっくり下へ下へと降下していき、ピタリと止まった漆黒の羽を抱きしめる様に抱いた。
すると漆黒の羽が消え、腕の中に確かな存在を感じた。
温かくて、大きなそれに涙が込み上げ、強く抱きしめた。
パァァッ…―――――
一際強い光を放ち、色味のある辺りの景色が現れる。
闇に侵食された上位天使の居住区、闇の粒子に埋もれる四枚羽の天使、こちらを見て大きく目を見開いたミカエル。
そして、抱きしめる腕の中の存在。
漆黒の六枚羽と艶やかな黒髪が視界いっぱいに入り、込み上げていた涙が一気に溢れる。
「っ…ラファエル様…声届いたよ…」
私は涙を流しながらラファエル様を抱きしめた。
空間転移は成功したのだ。
しかしそんな幸せをかみしめる間もなく横から声が割り入ってくる。
「イヴッ!貴様どうやって空間転移してきた!」
突然現れた私に驚いた表情をするミカエルをキッと睨んだ。
「ミカエル様、私は神に会いました」
「ッ…それがどうした」
ミカエルは一瞬動揺が顔に現れたものの、視線をそらさなかった。
しかし―――――
「記憶も戻りました」
「ッ……!」
今度は明らかに動揺し、言葉を詰まらせたミカエル。
その驚き様からして先程は無意識に過去の事を話していたのだろう。