剣舞
額に、柔らかな感覚が残る。

ヴァイスの唇


いつまでも残る温かな感触

相打って、拒絶を選び告げた現実のギャップは、今更ながらに、オリビアの心を傷めつける。


それでも、


時間がキズを癒すと、呪文のように繰り返し、自分を勇気づける。

自分は、的確で、無難な選択をした。
村の方針に従った。
正しい判断と行動をしたのだと、自分を褒めてみても、内心は虚しさだけが、支配していた。


こんな慰めで、魅せられた気持ちが消えるわけがないことは、自分自身が一番理解していたが、そうせずにはいられなかった。


また、そんなオリビアを静かに見守るしか方法がなく、ジルとカレンも、心苦しく思っていた。

わかっていたから。

オリビアの本心は。



ヴァイスが、ここを発って一月以上が経過していた。


なのに

胸を占めるのは、水宮の王太子の事ばかりで。

天と地が反りでもしなければ、結ばれる事のないような相手で。


オリビアは、なんとなく惨めな気分を味わい続けていた。


 
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