【短編】ヒーロー




――ドンッ



「あ、ごめんなさいっ」



必死すぎて、下りてきた人にぶつかって慌てて謝る。



「こっちこそ、すいません。
急いでて……あ、馬場さん?」

「へ?」



見上げると颯ちゃん位、背の高い男の子。


誰……だろう?



「ちょうど良かった!
今から馬場さんのところに行こうと思ってたんです。
今、大丈夫ですか?」



全然大丈夫じゃないんだけど……とは言えなくて、

『え……あ、はい?』

と笑顔で答えてしまった。



「俺、1年の柳って言います。
前から……その。
馬場さんのこと可愛いなって思ってて……
あ、彼氏っているんですか?」



え?



これって告白?



いや、好きも付き合ってもないから告白じゃないか?



「えっと……彼氏ですか?」



何故か敬語を使ってしまう。
だって……大きいから、ね?

『はい』

可愛い笑顔の柳君。



颯ちゃんは、彼氏じゃないもんね。






< 36 / 77 >

この作品をシェア

pagetop