しゃぼん玉。
私が話を続けようとしたら、突然マオに止められた。

「そろそろそれ着ない?」

……ぁ。

「忘れてた。」

髪で隠れてたから、すっかり忘れてた。

「あっち向いててほしいなぁ。」

「……今さら?」

〝まぁいいけど。〟

なんてぶつぶつ言いながらも、後ろを向いてくれる。
それが可笑しくて、思わずくすりと笑ってしまった。

「……。
ってかさぁ、ミルって子どもだよな?」

「うん……。」

それから私は、マオに今までのことを話した。

6歳の誕生日。
母様が病気で亡くなったこと。
いなくなったことを信じたくなくて、お城を飛び出したこと。
そして、ご主人に拐われたこと。

ご主人に変な薬を飲まされ、体が急成長していったこと。
悪夢の数ヶ月間のこと。

「……戻り方分からないもん。
もう、戻れないょ…。」

私は涙が止まらなかった。






帰る場所がない。

誰にも私は分かってもらえない。






幼い私には淋しくて淋しくて、ただ母様の温もりがほしかった。
だけど、そんなことはもう叶わない夢でしかなかった。

――もう一度…
後一度だけ…――

ただそれだけだったのに…。
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