課長さんはイジワル
第218話 課長の冷たい声
『……ということで、システム監査はいつに入れる?杉原』

スーパー早い英語でなんだか私に課長から質問が飛んできたらしい。

「システム監査の件は、どうなってるって聞いてるぞ」

佐久間主任がひそっと助け舟を出してくれる。

システム監査……。

システム監査ね。

えぇぇっと……いけない。

資料、どこ?

あった!

この資料の確か……。

し、しまった!

バージョンが古い。

システム監査の日程が入ってない。

だから、課長、聞いてきたんだ。

仕方ない、うろ覚えだけど、答えるしかない。

『ええっと、たぶん、来週の金曜日だったかと……』

『たぶん?俺たちの仕事に、『たぶん』はない。正確な日程を伝えろ』

課長の語気が強まる。

『すみません!手元資料が古くて。最新のを取ってきます』

立ち上がる私に課長が、待てと手で制する。

『いい。後で、全員にallメールしろ』

『……はい。すみません』

課長がはぁっと小さく溜息をつくのが聞こえて、胸がチクリと痛む。

『では、業務フローはコンプラにチェックしてもらったか?』

課長がまた痛いところを突く。

『いえ……まだ……』

『2日前には終わっているはずだぞ』

朝からの立て続けの失態に血の気が引く。

課長の声が冷たく会議室に響く。

『どうした?答えろ、杉原』

あの数時間前の甘い時間がまるでウソみたいに……。




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