課長さんはイジワル
第239話 宣戦布告
「以上だ。急で悪いが、明後日に備えてこちらのスタッフに引継ぎをしておいてくれ」

課長がファイルを畳み、立ち上がる。

私も同時に立ち上がったところで、佐久間主任に手を掴まれ、つんのめりそうになる。

「杉原君、座って。ちょっといいですか、奥田さん」

佐久間主任が両膝に手を置き、課長を見据える。

「どうした。何か問題でもあったか?」

ふっと笑いながら課長がソファに戻り、再び腰を降ろす。

「プライベートな話しをさせて下さい」

プライベート?って……。

佐久間主任は何を言おうとしているの?

いつになく真剣な佐久間主任の眼差しに、課長の顔から笑みが消え、姿勢を正す。

「いいだろう。聞こう」

課長も指を組み、じっと佐久間主任を見据える。


「……僕は、杉原君が好きです」

「佐久間主任!?何を……」

「本人にもそう伝えました」

課長がちらっと私を見て、視線を佐久間主任に戻す。

「……それは宣戦布告か?」

「そう取って頂いて、構いません」

「そうか……。プライベートな話はそれで終わりか?」

「……はい」

「分かった。では、2人とも仕事に戻れ」

課長の部屋から出て、放心状態からはっと現実に戻る。

「佐久間主任、何であんなことを!」

「何って?宣戦布告のこと?」

「私、課長と付き合ってますから」

「でも、幸せそうには見えない」

「何を……根拠に……」

「ある日、息が止まりそうになるくらい美しく輝いてるかと思えば、ボロボロな土偶になったり……。

嫌なんだよ。

そんな風に君が陰で泣くのを黙って見届けるくらいだったら、俺は俺の手で……俺の目の前でいつも笑わせてあげたいって思うんだよ」



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