課長さんはイジワル
あ~……疲れた。

新幹線の最終に飛び乗って、ようやく落ち着く。

さすが村。

披露宴8時間、招待客1000人なんて

「ありえないね」

ズレ落ち掛けたメガネを指で押し上げ、黒手帳を取り出す。

ズンチャッチャ~♪ズンチャッチャ~♪

やばい!

また、母さんからの電話だ。

出ようか、出まいか、一瞬、考える。

……出とくか。

後になればなるほど、この人は面倒だ。

「あー。もしもし……」

「ようやく出たわね。このドラ息子。私がいっくら掛けても……」

「悪い、母さん。疲れてるから、要件から先に言ってもらえると助かる」

「相変わらずね。仙台のおばさんがね、いい人がいるから、要(かなめ)にどうかしらって……」

「また、その話か。僕はしばらくは仕事が忙しいから、紹介とかはいいよ」

「でもね。あなたももう28になるでしょ?だから……」

「当分、結婚する気も女性と付き合う気もないないよ。じゃ」

「あっ!要……」

ブツっとケイタイを切る。

ったく!

こっちは、まだ失恋の痛手から立ち直ってもいないのに……。

しかし、キレイだったな……。

杉原……。

くそっ!

完敗だ、完敗!

駅の売店で買ったビールで独り、ヤケクソの乾杯をする。



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