課長さんはイジワル
第81話 モーソー課長
これは夢?
さっきのモーソーの続き?

でもこの手の力強さは……

夢じゃない感じがする。

じっと課長の手を見つめる。


ううん。

これは、夢だよ。

バカだね、私。

会いたい会いたいとか思っているうちに、こんなモーソー課長まで作ってしまうなんて。


課長とは今日の夕方、空港で会うはずなんだもん。

それで、課長はとんぼ返りで、また飛行機に乗って帰る予定なんだもん。


その課長が会社に来てるはず、ないっしょ。

うんうん頷きながら、モーソーっぽい課長の腕をサラリとほどく。


「杉原?」

いやぁ、まずい。


声まで鮮明に聞えて来た。

しかもバッチリ、低音の美声のステレオ再生。


小康状態に入ったらしい、お腹が再度、噴火の最終警告を告げる。


「うっ!」



私はお腹をさすりモーソー課長の肩をポンポンと叩く。

末期症状だ。

手触りまで鮮明。

だけど、視界がモーローモード。



「すみません、カチョー。今の私には、モーソーに付き合っているゆとりなんかありません」



私はモーソー課長の手を振り解く。


「何が妄想だ!」


それでもしつこく腕を掴む課長の手を振りほどき、トイレ目指して再び猛ダッシュする。


背後に佐久間主任の声を聞きながら。


「奥田課長!お久し振りです」


……えっ!




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