桜姫紀
思い出すのは辛い傷跡


第3章 思い出すのは辛い傷跡


「私は・・商人の家に生まれたんです。
両親は幼い頃に死んで、10歳離れている兄が唯一の家族でした・・。」

ポツリ、ポツリと葵さんは話し始めた。




ー10年前

「ちょっとーーーおにいちゃーん!!」
「何だ。」

ぷぅ、と私は頬をふくらませた。

「お兄ちゃん、歩くの早すぎるよぉ!」

「お前が遅い。」

お兄ちゃんの意地悪ーー。
いーっ、と舌を出しても全くお兄ちゃんには効果なし。

「あたっ!」

ガァンと目の前にあった小石につまずいて転ぶ。

「わぁぁぁぁぁぁんんん!!!!」

「・・はぁ。大丈夫か?」

「ひっく・・ひっく・・うん・・。」

お兄ちゃんが差し伸べた手を掴み立ち上がる。

「だから、ついてこなければ良かったのに。」

いつもはおにいちゃん一人で隣の村の市場に物を売りに行く。
だけど、お兄ちゃんは朝早く行って夜遅くかえる。
やっぱりさみしいよ・・。

「いーくー!」

「はいはい。」
< 20 / 73 >

この作品をシェア

pagetop