空へ
入部届けを職員室に提出した俺は、二人に軽音楽部の部室へと連れて行かれた。

「私、ベースの理沙(りさ)」

背の高い方な女の子が言った。

そして、背の低い方を指差し、言う。

「こっちは、キーボード兼ギターの良美(よしみ)」


そういえば吉倉さんは、軽音の部員は3人って言っていた。

じゃあこれで全員か。

「あんた、歌うまいらしいね。 楽器はなんか出来るやつあんの?」

ところ狭しと置かれた楽器を見つめ、理沙に質問される。

あれ?
俺、歌うまいなんて言ったっけ?

「まぁ、キーボード以外やったら大抵出来るで」

京都にいた時にバンドをしていた。

だからちょっとだけ、吉倉さんに軽音に誘われた時に、うっすら運命を感じたりもしたんだけどね…。

「え、マジ!?ギターもドラムも出来るの!!あんた、バンド経験者だったんだ!」

「うん、って言っても、ドラムはそんなに得意やないねん。けど、まぁしゃーない。吉倉さんが復帰するまでドラムやらしてもらうわ」

「あ、ドラムはいいよ。取りあえず今のトコ、ボーカルが足りないからボーカルやって。曲によってはギターやってもらうけどさ」

あれ?
ドラムもいないんじゃねーの?

「穴が空いたドラムは?」

俺がそう言った後、後ろから声がした。

「ドラムは私だよ」

振り返ると、そこには吉倉さんが立っていた。

え?
どういうこと?
鬱は??

「陽菜、コイツ何でも出来るんだって!」

理沙が吉倉さんに言う。

「うん、聞いてた」

吉倉さんはそう言って、満面の笑顔をみせた。

何、コレ。
こんなの全然鬱じゃねーじゃん!

「あのー、吉倉さん?」

「え、何?」

「もしかして、ハメた?」

吉倉さんは舌をペコッと出して言った。

「ゴメッ!」

やられた…
ってか恥ずかしッ!
ラブレターをいいように使われてるじゃん!

何これ、チョー悔しいんだけど。

「そりゃないわ…」

ちょっと俺、泣きそう。

「あはは、ホントにゴメン」

吉倉さんは、そう言い、次に耳打ちした。

「手紙の件、私からもお願いします」



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