空へ
「放してッ!」

「すぐ終わるって!」

そう言いながら同居人は、良美のスカートの中に手を入れていく。

その次の瞬間、玄関からガチャッという音が聞こえた。

彼氏が帰って来た!
あぁ、助かる。
まだ取り返しがつく…。

良美は大声で彼氏の名前を叫んだ。

「ゆう君!」

しかし彼氏は、良美を助けなかった。

良美と同居人を一目見るや、何を思ったのか、何も言わず家から出て行ったのだ。

「あはは、ゆうの奴、俺がヤッてもいいだってよ!」

良美の最後の砦は崩れた。

同居人の顔が歪んでいく。

成す術をなくした良美の涙は、止まらなく流れた。

そしてついに、同居人が良美に入る。

「ギャーァ」

断末魔のような悲鳴が部屋中に響き渡る。

初めは痛い…。
周りからそう聞いてはいたものの、それは良美の予想を遥かに越えていた。

「ウグッ…ガッ…」

同居人が腰を振る度に、良美の口から、そんな声が漏れる。

「お前、気持ち悪い声出すんじゃねーよ!」

そう言った同居人は、良美の頬を思いっ切り殴った。

「イッ!」

「だからうっせぇってッ!」

もう一発殴る。

「ウッ…」

良美は声を押し殺した。
声を出したら殴られる…。

絶望の淵で何度も彼氏の名前を叫んだ。

しかし彼氏は、二度と良美の前に姿を現すことはななかった…。

そして、ショック状態で声を押し殺した良美は、この日より声が出なくなってしまったのだった。



ゆう君…


何で助けてくれなかったの?


何でどっか行っちゃったの?


私、ゆう君の為に可愛くなったよ?


ゆう君が、可愛い子が好きって言ったから、可愛くなったよ?


ゆう君もあんなに私を愛してくれてたのに…



次の日、良美は彼氏の家を訪ねた。
何かの間違いだったのじゃないだろうか、そんな薄い期待を込めて…。

しかし、彼氏の家を合鍵で開けてみると、そこには家具の一式やら何やら、全てがきれいになくなっていたのだ。

良美は、大好きだった彼氏に裏切られ、まるでボロ雑巾のように捨てられてしまったのだった。



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