空へ
弦を取り、ギターの中からそれを取り出す。

それは、札束だった。

札束が4つ。

計400万円もの大金が、ギターの中に入っていた。

「な、何で…」

私は、ギターを荒く置き、机の引き出しに入れておいた、親父が書き残した紙をもう一度確かめた。

『理沙、卒業おめでとう。お前の荷物にはなりたくないから、家を出ることにした』

やっぱり、これだけしか書いていない。

そう思った私は、何気に紙を裏向けた。

「…えッ!」

裏には、親父が書き残した、もう一つの言葉があった。

『俺は、父親らしい事は何も出来なかった。だから、せめて、お前には大学に行って欲しい。そして看護士になる夢を叶えて欲しい。だから、少ないけど、静岡で辞めた運送会社から貰った退職金を、お前に初めて買ってあげたギターの中に置いていくことにした』

400万もの金を置いて行った親父は、きっと無一文で出ていったはずた。

私はメモを読んで、自分の過ちを嘆いた。

「私…私…親父がこんなことをしてくれているのに、あんな仕事をしちゃった…。悪環境のせいにして、半ばヤケクソであんな仕事をしちゃった…」

胸が破裂しそうなくらい痛い。

誰かに、側にいて欲しい。

誰かに、話を聞いて欲しい…。

無意識にそう思った私は、気がついたら優太郎に電話をしていた。



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