もう1度~私と先生と桜の木~
「ちょっとトイレ行ってくる…」
碧が行ってしまうと類ははあ、と溜め息をつく。
「ここだけの話だけどさ」
「うん」
「よーたくん、奏のこと聞いて自分のことのように怒ってたんだよ」
「え?」
「俺たちがテルくんの浮気の話したら、
急に顔色変わって、目なんてギラギラさせちゃっててさ。
ああ、よーたくんはそれだけ奏がスキなんだな、って思った」
はは、と笑う類。
「俺、本当はテルくんを応援してた。
でも、酔っぱらってるからって、そんなことするとは思わなくてさ。
正直…見損なったよ。
だからってよーたくんを応援するワケじゃないけど。
でも、奏の幸せ考えたらテルくんとじゃなく、よーたくんと付き合うのが1番幸せなのかな…とも思う」
「なんか類、大人になったね」
「はあ?今そんな話してねーじゃん」
「うん、ごめん」
「ってなんでニヤニヤしてんだ、バーカ」
ビシッとなぜかデコピンをくらう。
「痛い!フツーに思いっきり痛い!
なんなの!?意味分かんない!」
「おバカな奏にお仕置きしただけ」
「…ヒドイ」
涙目で類を睨むけど、
でも類はなんの問題もない、みたいな顔でいて。
こういうところは高校の頃と変わってないなあ、なんてしみじみと思った。