もう1度~私と先生と桜の木~




「…奏っ!!」


走って来た勢いのまま、私に抱きついた琴音。

あまりの勢いに後ろに転びそうになる。

でもそれを類が支えてくれて、ギリギリ持ち直す。


「じゃ、俺帰るな」

小声でそう言った類に口パクでありがとう、と伝える。


「琴音?大丈夫?」


「…よーたくんっ…よーたくんに…」


何かを伝えたいのはすごく分かるけど。

でも琴音は泣きじゃくり、何も伝わらない。


「琴音?とりあえず座ろ?」

さっきまで座っていた場所に琴音を座らせる。

しばらくするとやっと泣き止んだらしく琴音は顔を上げた。



「あたし、言ったんだ。

ちゃんと好きだって伝えたの」


でもね、そう続ける琴音の顔がまた泣き出しそうに歪む。


「でもね、気持ちは嬉しいけど生徒をそういうふうには見れない、って言われちゃった」


そう言った琴音はまた泣き出す。

正直、泣きだしたいのは私も一緒だった。


だって、生徒をそういうふうに見れない、

ということは私の恋が叶うことはないということで。


告白もしてないのに

私の恋は終わったのだ。


最初から叶わないとは思っていても、

やっぱり目の前にこうして突き付けられるとどうしようもなく、胸が痛くて。


泣きじゃくる琴音の背中をさすりながら、

少しだけ溢れてしまった涙を気づかれないように拭った。







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