君を忘れない

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相変わらず窓の外は暑い夏の日差しが降り注いでいる。

この日差しを自ら浴びるために外に出るなど、大抵の人は憂鬱な行動であり、それが通常の生活なのだろう。

しかし、今の俺にはそれすら容易ではなくなってきた。

思っていたよりも病気の進行が早く、正直、ここまで早いとは思ってもいなかったので戸惑いもあるが、今更戸惑っても仕方がないことと冷静になる。

いや、冷静というよりは諦めという感情に近い。



つまらない・・・



俺はこんなにもつまらない男になってしまったのか。



病気の進行によって体が衰弱していくこと以上に自分がつまらなくなっていくことに悲しくなってしまう。

頭の中に浮かぶ全ての考えが冷静に処理されて、諦めという感情になる。

こんな男、つまらないにもほどがあるだろう。



思わず、病室の壁を握り拳で叩いてしまい、その音が病室に響き渡った。

それと同時に大きいため息が病室に響く。



同じ病室のおっちゃんのため息だ。



元気だったおっちゃんは、ここ最近めっきり元気が無くなっていた。

そんなおっちゃんを見ると、俺も周りから見たらこんな感じに見られてるのかなと思い、またつまらない考えを起こしてしまいそうになる。
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