君を忘れない

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手紙を書いてから三日、いや、朝方くらいに書き終わったから、正式には二日だろうか。

手紙を書き終えて、その日の午前中に病院側に無理を言って病室を出た。

かなり急だったから、看護師の人たちにはかなり迷惑をかけてしまったが、自分で渡してしまっては口では言えないことを手紙で書いた意味が無くなってしまう気がした。

だから、どうしても早く出る必要があった。



ヒメは今頃何をしているだろう・・・

元気にしているだろうか・・・

ちょっと、保護者みたいになってしまっている自分がいて笑いそうになってしまった。



あいつの口からは一度だけしか両親の話を聞いたことがない。

大学に来て二年のときに競艇選手を目指すことを親に告げて、大反対されたのち半ば勘当されるような格好で家を追い出され、辛うじて大学には行かせてもらっていると言っていた。

そして、その日から地元や実家に帰ることはもちろん、一度も親とは連絡も取っていない。

あの笑顔の裏にそんな家庭事情があるなんて想像もできなかった。

ヒメには悪いが、その話を聞いてからは帰れる家があることは凄く有難くていいことだ、と改めて思う。



おっちゃんはちゃんとヒメに渡してくれるだろうか。

もし、ヒメが来たときにおっちゃんが病室にいなくて、勘のいいあいつは俺が地元に帰ったことに気づいて、もう病室に来なくなってしまったりしたら、あいつに何も伝えられずに終わってしまう。

今更ながら最悪なことしか頭の中には浮かばない。



頼む・・・
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