君を忘れない
「小山には全て話したほうがいいと思います」


こいつは言いたいことをストレートに言ってくる。

こいつのこういうところが良いところであり、自信を持って言えるわけではないが自然と仲良くなった一つの理由なのだろう。



良いところだとは分かっているが、今だけはそれがとてつもなく苦しい。


「絶対に話すなよ」


自分でも顔が強張っているのが分かった。

こんな顔をしている自分が嫌で、すぐに表情を緩めた。


「すまん、本当に小山には話さないでくれ。

あいつが知ってしまったら、絶対に俺に気を使うし、そしたらあいつまで・・・」


それだけは絶対に避けなければいけない。

でなければ、僕はこの1年間何のために隠してきていたのか分からなくなってしまう。

四盛にとっては、もしかしたら他のみんながこのことを知っても理解できないことなのかもしれない。

だけど、自分が強い意志のもとで行動しているとすれば、他人には理解できないことも自分には大切なことだ。

あいつにまで僕のような思いはさせたくない。



四盛が大きくため息をついた。


「トラさんがそう言うなら、今は小山には話しませんよ」


呆れたような顔になって肩を落とし、窓の外を見た。

僕もそれに釣られて外を見るが、そこにはいつもと変わらずに陸橋だけが映し出されていた。


「だけど、必要と思ったら話しますからね」


こちらを振り返ると、また真剣な顔に戻っていた。

後輩なのに、こいつはここまで僕のことを考えてくれていて、心配までしてくれているのだ。

その気持ちは嬉しいのだが・・・
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