【完】TEARS−ティアーズ−


――ガッシャン!!!


大きな音と共に、近くにあった自転車が倒れた。



は?



音に驚いた俺がそっちに顔を向けると、自転車の間からふわふわした栗色の長い髪が見えた。


誰だ?



「えっ。なに!? やだっ」



そう小さく叫んだ宮坂が、俺の隣を走り過ぎる。



「あー……」



宮坂を呼び止めようと思ったけど。

一瞬のうちに色々考えた俺は、やめておく事にした。


『宮坂とはこれ以上付き合うつもりはない』
って、ハッキリ言っておくべきなのかもしれないけど。

どうせ、面倒なことになるだけっぽいし。


もう、いいや。


大学に行かなきゃ別れるとか言ってたし。

俺は大学には行かねぇし。


問題ないだろ。



それにしても鈍臭ぇ女だなぁ。


ゆっくりと歩きながら、転んでいる女の前に立った。


その女は下を向いたまま動かない。

なんだ?
どっか怪我でもしてんのか?


その女の顔を覗き込もうとした時だった。



「いっ…」



い?

そんな声が聞こえた瞬間、顔をあげた女は俺に気付いて、ハッとした表情を見せた。
< 15 / 371 >

この作品をシェア

pagetop