【完】TEARS−ティアーズ−


「別にそんな風には思ってないけど」

「あ、そうなんだ」



ホッとした顔を見せる篠原に、頷いて見せると



「そっかぁ。あたし勝手に決め付けちゃってたかも。
楽しくなさそうだったし、本当は帰りたいんじゃないかなぁって思ってたんだ。
無愛想だから、そう見えただけだったのかなぁ……」



篠原は、そう言った後に、しまった! そんな顔をした。



「ふーん」



無愛想、ね。

まぁ、愛想がいい方じゃないけど。

けっこうハッキリ言ってくれんじゃん。



「あ、いや、ごめっ……」

「別にいいけど」

「あ……ごめんなさい」

「篠原って鈍臭いよな。今もだけど、初めて会った時も……」



そう言いかけて、今度は俺が しまった! そんな顔をしたと思う。

話の流れとはいえ、自分からこの話題に触れちまうなんて。




「え!? あ……っ。 やっぱり、あたしだって気付いてんだ……」



って、そりゃそうだろ。

あんな派手に転んだ奴を忘れろって言われても、なぁ。



「で、でも、この間は言わなかったよね?」



この間?

ああ、“日替わり弁当”食券の時か。



「まぁ、俺も面倒なとこ見られたからな」

「ああ! 彼女さんとケンカしてたもんね!」

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