【完】TEARS−ティアーズ−


そう言うと郁君は、またメニューに目を戻してしまった。


あたしのバカー。


せっかく郁君が話しかけてくれてたのにぃ。

南ちゃんに言われた“男の子に慣れる”チャンスだったのにぃ。



あーあ。
郁君、怒っちゃったかなぁ?


あたしは男の子が少し苦手。


多分、原因は小学生の頃に男の子に苛められたこと。

苛められたっていっても、ほんの少しの間なんだけど。


ママに結んでもらった可愛いリボンをとられたり。

『ブース』って意地悪なことを言われたり。


それから男の子は意地悪で乱暴ってイメージになっちゃって。

それがどうしても抜けないんだ。


それを南ちゃんに言ったら

『その男の子達は乃亜の事が好きだったんだよ』

なんて言ってくれたけど。


そんなわけないよっ。

好きな女の子に意地悪する男の子なんているわけないもん!


だから何となく距離を置くようになったんだ。


それに高校生になったら周りの男の子達は急に大きくなっちゃって。

それも恐いうちのひとつになっちゃった。


周りのお友達は、彼氏や好きな人の話したりして盛り上がってるのに、あたしは未だ女友達と一緒にいる方が何倍も楽しくって。


そもそも男の子にドキドキとかキュンとか……そんな気持ちになった事がない!


実はちょっぴり。

そんな気持ちが来る日を憧れちゃったりもしてるんだけど。

男の子と接点を持たないあたしには、程遠い話で。


それを知ってる南ちゃんは男慣れしろとか言うけど……あたしに出来るのかなぁ。
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