アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女


ん?兄貴!?



今、兄貴って言ったよね?



私の視線は、伸也さんと低い声の男を交互に行ったり来たりした。



なるほどね。



二人を何往復したか、わからないけど、やっと頭の中の混乱が治まってくる。



兄弟だからか。



だから、どこかで見たことある顔だったんだ。




「兄貴」



「あ?」



「こないだ話した子。女じゃない」



「あぁ。そっか。悪かったな」



そう言いながら、私の頭をポンっとして、伸也さんの近くに腰を下ろしたお兄さん。



そこから話しはじめた2人の会話は、全くと言っていいほど意味が分からなかった。



日本語で話しているのはわかる。



所々に出てくる単語も分かる。



でも内容がわからない。



兄弟だから通じ合ってる、とかいうのともまた違う。



暇だけど、ねっ転がるのも失礼だし、かといって話題に入っていけるわけはなく、ただ時間だけが過ぎていった。

< 103 / 688 >

この作品をシェア

pagetop