アイシテル 街を仕切る男×傷を負った少女

受け止めて



伸也さんのいない、新しい生活を始められたことに少し安心していた。



まだ、伸也さんを忘れたわけではないし、伸也さんへの思いが消えたわけでもないけど、こうして笑うことが出来る。



こうやって時間が過ぎて行けば、伸也さんのことも思い出に出来る日が来るような気がして……



でも、学校から帰ってきてからは一人の時間。



だから、余計なことを考えてしまう。



久しぶりに勉強机に座り、教科書を開いた。



時間潰しに予習でもやることにするか。



本当に高校の教科書かと思うくらい簡単な内容。



殆どが中学校までの復讐だった。



まだ23時なのに、もうすることがない。



溜まり場へ行くまで、私はどうやって一人の時間を過ごしていたのだろう。



やることがなくなったから、シャワーを浴びて眠ることにした。



ベッドに入ると必ず右側を空けてしまう。



伸也さんと一緒に寝ていたときの癖。



たった何年かで意識しなくても、こんなことが染み付いてしまうことが悲しかった。



きっと、私の体には沢山の伸也さんが染み付いているのだろう。


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