時空の森と悪戯な風

駐車場に着くと、圭介の車はなかった。



圭介が誰と会ったのか気にはなったが、アタシはこの天気も気になる。



「ここまで来たんだから」



車を降り、傘をさして“会える場所”へ向かった。



雨で足元が悪くて歩きにくい。



『こんな時でも会いたい人って誰だったんだろう』



そう考えながら、どんどん歩いていた。



もう少しで父と会った大木という所で、急に強い風が、森の中を駆け巡った。



「何なのッ?!この風は?!」



木々の間をすり抜ける風が、突風となってアタシに吹き付け、雨水と一緒に叩き付けてくる。



「ダメだ…こんなんじゃ行けない!」



傘を閉じ、まるで風に押し戻されるように、大木を後にした。



森から出ると風は弱まり、雨も小降りになった。

空には灰色の雲の間から、青空が見える。



今日は例え天気が回復しても、森に入るのを諦める事にした。





あの風は…
 
アタシを大木へ近付けさせまいと、誰かが仕組んだ悪戯だったんだろうか…




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