2人のゴール
 
 昼休み。
 俺は席に座って読書してる咲月を見てるか、笠寺や佐久間と遊ぶのが日課になっている。
 教室の前に、咲月の親友の七瀬波香が立っている。
 俺を呼んでいるみたいだ。
 俺は七瀬のところへ行く。
「咲月呼んで」
 自分で呼べばいいだろ。
 何で俺が咲月を呼ぶんだよ。
 そのために俺を呼ぶなんておかしいだろ?
 でも、咲月を呼ぶのはやじゃないから呼んだ。
「石橋~!」
 咲月と目が合った。
「あ、波香」
 でも、その目はすぐに七瀬の方へと向けられてしまう。
「ねぇ、咲月のこと名前で呼んで」
 そう言われて、顔が赤くなる。
「……」
 咲月を名前で呼ぶのがすごく恥ずかしくて、口だけ動かして、声にはださなかった。というより、だせなかった。
「ちゃんと声にだして言って」
「……咲月……」
 咲月を名前で呼んで、俺はすぐにその場を離れた。
 用事も何もないのに呼ぶなんて、恥ずかしすぎる。

 咲月は七瀬に空間図形を教えている。
 俺も教えてもらおっかな。
「お前も教えてもらえば、石橋に」
「な、何言ってんだよ。佐久間」
 教えてもらいたいけど、声かけることも大変なのに、無理だよ。
「佐久間は、好きな人いねぇのかよ?」
「いないよ」
 佐久間って女に興味なさそうだよな。
「早くしねぇと、石橋、他の男に取られちまうぞ」

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