うらばなし
うらばなしじゃないですよ、な前置きを章題に書きますが、みなさん見てますかー


「機嫌が、良さそうですね」


「分かるかい?今日は僕に傷をつけた奴がいたんだ」


「痛いのに、笑うのですか」


「痛いからこそ笑うのだよ。君に癒してもらえるからね」


「癒すだなんて、私は何も……」


「触れて、舐めて、また触れて。それでいい。やってくれるね?君は僕を愛してくれているのだから」


「……」


「さあ、早く。“愛しておくれ”よ」


「でしたら、この手錠を外して頂きたい」


「ああ、そうだね。うっかりしていたよ。――でも、外せば君は逃げるだろう?」


「もう何日も、この状態ですから」


「逃げるからだ。逃がさない、離さない。逃げようとも追いかけ、手を取ろう。帰る場所、居場所、果ては道でさえも無くしてあげたのに。それでも逃げるだなんて――足、要らないか?」


「……」


「冗談だよ。君の綺麗な足を切りたくはない。口づけをしたくなる足だ」


「男として、恥ずかしい行為ですね」


「屈辱的ながらも、これが愛となれば甘美。僕は君に屈伏しよう。君の傍から離れない証として、自身の足でも切り落とそうか?」


「傷つかないでくださいよ。舌が、疲れますから。――来てください」


「愛してくれるね」


「あなたにすがる以外に、道はありませんから」


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