うらばなし

ーー

園木「今日は寒いので、お鍋を作ってみました」

倉石「……」
(寒くとも、あなたがいるだけで、俺の心は沖縄ですが!?まさか、彼女の手料理が食べられるとは。むしろレタス千切って出しただけでも完璧な『手料理』だと、俺は歓喜出来るのに!鍋を作ってくれるなんて、口からだけでなく体全体使って味わいたい。ぐつぐつ鍋でも頭から被って摂取したい)


園「お鍋なんて、一人暮らし初めてから久々です。やっぱり、誰かと食べる食事は美味しいですよね!」

倉「……」
(『誰か』どころじゃなく、あなたとならば、例え腐った物でも絶品になるというのに。今の俺ならば、鍋の中に青酸カリを仕込まれても笑顔で食べきる。死んでも食べきる、むしろおかわり所望!俺の保険金で生活してくれ!)

園「倉石さんもそう思いますか?料理は人並みなんですが、今日は友達から教えてもらった豆乳鍋に挑戦してみました!」

倉「……!」
(豆乳、だと……!名前や見た目からして、とんでもない代物じゃないか。だって、『豆乳』。『にゅう』だぞ『にゅー』。なんて事だ、日本人。こんな、天使の化身たる彼女の清い口から自然と、下極まりない『にゅう』を吐かせるとは。誰の陰謀だ!フルーツポンチ以上にアウトな言葉だぞ!

見た目にしても、一見、清き彼女に相応しい白だが、見方を変えれば白濁色。これを、彼女が美味しそうに口に入れ、ごくりと飲み込むなんて。食事に集中出来ない。別の三大欲求が満たされてしまう)

園「豆乳だから、結構クセがあるかと思ったんですが、食べてみたらおいしかったので、倉石さんとも……あ、豆乳大丈夫ですか」

倉「……」
(ああ、彼女が俺的三大欲求だった。食う寝るやるなんぞ、どうでもいい。そこにいるだけで満たされるのに、また『にゅう』って言った。そればかりが気になってしょうがない!)

園「良かった。今、取り分けますね!」

倉「……」
(取り分けるなら、あなたのお箸でえぇ!そんな取り分けように菜箸用意せずともいいのに!あなたが口にくわえた物を、俺の口に入れてくれ。もう、喉貫通してもいいから。なんなら、鍋の煮汁をあなたの唾液にしてもいいというのに)

園「倉石さん?」

倉「……」
(どうすれば、合法的に彼女成分を摂取出来るのか。法律の穴を見つけろ、俺なら出来る。出来なきゃいっそ、非合法でも)

園「あ、そうですよね。はい、あーん」

倉「……!!」

園「え、倉石さん!ど、どうしましたか、いきなり倒れられて!く、倉石さん!?」

倉「……」
(もう、青酸カリなくとも死ねるな、これ)






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